がん検診の受診率が低い理由はなぜなのかと疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
日本のがん検診の受診率は諸外国に比べると低く、受診によりデメリットがあるのか、と心配になるでしょう。
結論として、がん検診の受診率が低い理由は複数ありますが、主な要因は知識不足やがん検診に対する不安などが挙げられます。
本記事ではがん検診の受診率が低い理由を詳しく解説するのみでなく、がん検診に関する疑問についても回答しています。
がん検診のメリット・デメリットを正しく把握して、自身の健康を守るために行動を起こしましょう。
日本のがん検診の受診率が低い理由
平成28年に政府によりおこなわれた「がん対策に関する世論調査」(複数回答可)によると、がん検診未受診理由の上位3つは次のとおりです。
<がん検診未受診理由>
未受診理由 | 比率 |
---|---|
受ける時間がない | 30.7% |
健康状態に自信があり、受ける必要性を感じない | 29.2% |
心配な時はいつでも医療機関を受診できるから | 23.7% |
ほかにもさまざまな理由が挙げられましたが、がん検診の必要性が知られていないことが大きな原因と考えられました。
日本のがん患者数は増加傾向にある
近年、日本でがん罹患数とがん死亡数の両方が年々増加しているのをご存じでしょうか。
2005年には6万人程度だったがん罹患数は、2015年に9万人を突破しています。
今や日本では二人に一人がガンにかかり、三人に一人がガンで死亡しているのです。
日本ではがんによる死亡数の対策の一つとして、がん検診の受診率向上を目標に考えています。
実は、欧米のがん検診受診率は70〜80%ととても高く、その影響により欧米でのがんによる死亡数は年々減少傾向にあります。
がん検診はがんによる死亡数の減少を目的としており、健康を守るための重要な役割を果たすのです。
日本のがん検診受診率
日本のがん検診受診率は50%未満で、あまり高いとはいえません。
厚生労働省の調査によると、男女別のがん検診受診率は次のとおりです。
<がん検診受診率,2022年>
がん検診 | ||
胃がん(50~69歳) | 男性 | 53.7% |
女性 | 43.5% | |
大腸がん(40~69歳) | 男性 | 49.1% |
女性 | 42.8% | |
肺がん(40~69歳) | 男性 | 53.2% |
女性 | 46.4% | |
乳がん(40~69歳) | 女性 | 47.4% |
子宮頸がん(20~69歳) | 女性 | 43.6% |
2023年より厚生労働省では、がん検診受診率を60%に引き上げることを目標としています。
まずは、がんが誰にでも起こる病気であることを認識し、がん検診の必要性の理解が大切です。
日本のがん検診の受診率が低い理由
がん検診の未受診理由には、「受ける時間がない」、「必要性を感じない」などの理由が上位にあることを解説しましたが、ほかにも次のような理由が挙げられています。
- 費用がかかり、経済的な負担になる
- うっかり受診するのを忘れる
- 検査に伴う苦痛に不安がある
- がんであるとわかるのが怖い
- がん検診を知らない
- 受ける場所が不便である
- がん検診は、見落としがあると思っている
これらの理由の多くは、がんやがん検診に対する正しい知識や事実が浸透していないことが主な原因と考えられます。
たとえば、費用面に関しての心配が原因に挙げられていますが、がん検診は各自治体により費用が負担されているので安価で受診可能です。
また、検査に伴う苦痛に関しても、がん検診の多くは検査のなかでも侵襲性(患者への刺激性)が低い検査が採用されています。
がん検診の受診率が低い原因は、がん検診に対する正しい知識や情報が不足していることが挙げられます。
定期的にがん検診を受けるメリット
がん検診の重要性について解説しましたが、具体的ながん検診を受診するメリットとはなんでしょうか。
定期的にがん検診を受けることで得られるメリットを3つ紹介します。
がんの早期発見・早期治療につながる
がん検診を受診する最大のメリットはがんの早期発見・早期治療が可能になる点です。
また、それによりがんによる死亡のリスクを下げられます。
厚生労働相により推奨されているがん検診は、がんの早期発見によるがん死亡リスクの減少効果が科学的根拠に基づいて証明されています。
たとえば、がん検診の検査項目や対象年齢、受診期間などはさまざまな研究結果に基づいて設定されているのです。
がん以外の病気を見つけられる可能性がある
がん検診ではがんのみでなく、身体の異変やがん以外の病気が見つかることもあります。
がん検診でおこなわれる検査は、主にがんの発見に効果が見込まれる検査ですが、ほかの病気も見つけられるでしょう。
たとえば、大腸がん検診で行われる便潜血検査では、便から肉眼ではわからないレベルの血液を検出できます。
便潜血検査は、大腸内で出血を起こしているかどうかの検査であるため、がん以外にも、潰瘍性大腸炎や大腸ポリープなどの病気が見つかる場合もあります。
安心が得られる
がん検診で「異常なし」の結果が得られた場合、大きな安心感を得られるでしょう。
がん検診はがんの早期発見に大きな効果がある検査のため、がん検診で異常がない場合、がんの可能性はとても低いといえます。
ただし、がん検診に限らず検査結果が100%正しい検査は存在しません。
定期的な検診受診を心がけましょう。
定期的にがん検診を受けるデメリット
がん検診にはメリットのみでなくデメリットが存在します。
厚生労働相が推奨しているがん検診の内容は、デメリットよりもがんによる死亡リスク減少効果が高くなるように設定されていますが、正しい理解が必要です。
医療行為において、メリットとデメリットは多くの場合に存在します。
正確に把握して自身が納得できる医療を受けましょう。
費用と時間がかかる
一つめのデメリットは、がん検診を受診するためには多少の費用や時間が必要なことです。
しかし、費用については、各自治体で費用の大半が負担されるため、無料~2000円未満で受診できます。
時間についてはがんの部位ごとに差がありますが、比較的検査時間がかかる胃がん検診の胃内視鏡検査で1時間程度です。
一般的には、費用も時間も大きなデメリットにはなり得ませんが、受診率を下げる要因の一つであります。
100%がんを発見できるわけではない
がん検診の検査結果は100%正しい結果ではありません。
がん検診結果が「異常なし」だったとしても、がんを見逃している可能性は極僅かにあります。
現在、がんを見つける精度を向上させるさまざまな研究が行われていますが、100%がんを発見できる検査の開発には至っていません。
そのため、定期的ながん検診の受診が重要になるのです。
検査によっては心理的・身体的負担がかかる
がん検診の受診により、心理的なストレスや、痛みや苦痛などの身体的負担がかかることもあります。
たとえば、胃がん検診でおこなわれる胃内視鏡検査では、胃カメラの挿入による不快感や気持ち悪さはある程度感じるでしょう。
また、子宮頚がん検診の細胞診検査では、検体採取時に痛みや出血を伴うこともあります。
がん検診では、多くの検査のなかでも比較的患者への負担が少ない検査がおこなわれていますが、一定のストレスは感じるのかもしれません。
がん検診に関するよくある質問
がん検診に関してほかにもさまざまな疑問が挙げられるでしょう。
今回はそのなかでもよくある疑問について解説します。
がん検診についてもっと詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
がん検診は何歳から受けたらよいでしょうか?
厚生労働相の推奨によると、胃がんと大腸がん検診は50歳から、乳がんと肺がん検診は40歳から、子宮頚がん検診は20歳からとあります。
これらの推奨年齢は科学的根拠に基づいて設定されており、推奨年齢未満の方ががん検診を受診するとデメリットの方が大きくなるリスクがあります。
がん検診はどのくらいの頻度で受けたらよいでしょうか?
厚生労働相によると乳がん、大腸がん、胃がん検診は2年ごとの受診、肺がん、子宮頸がんは1年ごとの受診が推奨されています。
これらも科学的根拠に基づいて設定されており、主にがんの腫瘍増大スピードや、早期発見により期待される治療効果などに影響されます。
がん検診は保険適用になりますか?
保険適用ではありませんが、お住まいの自治体により多くの費用は負担され、少しの自己負担もしくは無料で受けられます。
また、会社で負担される場合もあります。
ただし、自治体で負担してもらえるがん検診は対象年齢や対象時期があるので、それ以外の自己判断でがんの検査を受ける場合は全額自己負担です。
必ず医師に相談しましょう。
まとめ
がん検診の受診率が低い理由は、がん検診によるデメリットが原因ではなく、がん検診の必要性やがん検診の詳細の認知が低いことが考えられました。
がん検診にはメリットとデメリット両方が存在し、それらを理解するのはがん検診の必要性を理解するのにつながります。
がん検診の必要性とがん自体を理解し、自身の健康を大事にしましょう。