「乳がん検診は痛いと聞くのでなかなか受ける気になれない」
「無痛MRI乳がん検診は本当に痛みがないのか」
乳がん検診に対して、上記のような不安や疑問をかかえていないでしょうか。
検査時の痛みや恥ずかしさなどの問題を解決する新しい検査方法として、「痛くない」「見られない」「被ばくしない」を叶えた「無痛MRI乳がん検診」が登場しました。
本記事では、無痛MRI乳がん検診の特徴や検査の流れ、注意点についてもあわせて解説します。
痛みや恥ずかしさを避けて乳がん検診を受けたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
乳がんとはどのような病気?
乳がんは、日本人女性のがん罹患率第1位のがんで、30代から増えはじめ、40代で発症のピークを迎えます(※1)。
乳がんは早期発見・早期治療できれば90%以上が治るとされています。(※2)乳がんで亡くなる可能性を下げるためには定期的な乳がん検診の受診が重要です。
乳房の乳腺にできる悪性腫瘍
乳がんは乳腺組織にできる悪性腫瘍で、主に母乳をつくる「小葉」や母乳が通る管である「乳管」に発生します。
乳がんの主な症状は乳房のしこりであり、ほかにも乳房のくぼみやただれ、乳頭からの分泌物などがみられる場合もあります。
乳がんの初期は無症状であることが多いため、症状があらわれたときにはすでに進行がんになっている可能性も少なくありません。
発症の主な原因には女性ホルモンが深く関わっており、遺伝や食生活の欧米化、ライフスタイルの変化なども影響しているといわれています。
30代から発症リスクが高まる
乳がんは、ほかのがんと比べて若い方に発症しやすいがんであり、とくに30代ごろから発症リスクが高まるため注意が必要です。
日本における乳がん好発年齢は40代後半~50代前半とされているため(※3)、乳がん検診は40歳から推奨されています。
乳がん検診の主な方法・料金
乳がん検診の検査のなかでも、ここでは次の検査の方法や料金について解説します。
- マンモグラフィ
- 乳腺超音波(エコー)検査
- 痛MRI乳がん検診
それぞれの検査ごとに特徴があるため、ご自身にあった検査方法を見つけたい方はぜひ参考にしてみてください。
マンモグラフィ
「マンモグラフィ」とは、専用のX線装置で左右の乳房を片方ずつ挟んで圧迫し、X線写真を撮影する検査です。
乳がんの前段階である石灰化や、硬くて小さな腫瘍の発見に適しています。
乳がん検診の検査方法はいくつかありますが、厚生労働省により、乳がんの死亡率を減少させる科学的根拠が認められているのはマンモグラフィのみです(※4)。
マンモグラフィにかかる一般的な検査費用は5,000円ほどです(※5)。
市町村や自治体がおこなう住民検診や、勤務先でおこなう職域検診で受ける場合は、市町村や会社からの補助が出る場合が多く、基本的には無料~数千円で受けられます(※6)(※7)。
乳腺超音波(エコー)検査
「乳腺超音波(エコー)検査」とは、乳房用の超音波診断装置を用いて超音波を乳房に当て、反射する信号を画像化する検査です。
しこりの内部や表面の状態の画像から、がんの良性・悪性の識別ができます。
検査では、ベッドに仰向けに寝た状態で乳房にゼリーを塗り、超音波を発する機器を当てるのみで、検査による痛みの心配がありません。
乳がんの超音波検査にかかる一般的な費用は、自費診療の場合で4,000~5,000円ほどです(※8)。
無痛MRI乳がん検診
「無痛MRI乳がん検診」は近年登場した画期的な検査方法で、電磁波を発するトンネル状の装置のなかに入り画像を撮影します。
うつ伏せの状態でMRI装置に入るのみで検査でき、痛みや不快感の心配はほぼありません。
無痛MRI乳がん検診の費用の相場は、20,000円ほどです(※9)。
無痛MRI乳がん検診は国の指針で定められた検査方法ではないため、基本的に保険適用はさません。
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)の特徴
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブスサーチ)とは、MRIを使用しておこなう、痛みがない乳がん検査です。
無痛MRI乳がん検診には、次のような特徴があります。
- 乳房を挟まないため痛みがない
- 胸をだれにも見られない
- 放射線被ばくがない
- がん発見の精度が高い
- 乳房の手術後でも検査できる
マンモグラフィーによる痛みの不安で、乳がん検診をなかなか受けられない方は、ぜひ参考にしてみてください。
乳房を挟まないため痛みがない
無痛MRI乳がん検診では、マンモグラフィのように乳房を板で挟んで圧迫する必要がなく、検査時の痛みの心配がありません。
検査では、乳房型に穴が空いたMRI専用のベッドにうつ伏せになるのみで撮影が終了します。
胸をだれにも見られない
マンモグラフィや乳腺超音波(エコー)検査などの従来の乳がん検査では、検査の精度を高めるために乳房をあらわにして撮影する必要がありました。
一方で、無痛MRI乳がん検診ではTシャツや検査着を着たまま検査でき、胸を見られる心配がありません。
乳がん検診の際の痛みに加えて、胸を見られる恥ずかしさで受診を控えていた方にとっては、非常に大きなメリットといえるでしょう。
放射線被ばくがない
MRI検査ではX線を使用しないため、放射線被ばくはありません。
乳がん検診の代表的な検査であるマンモグラフィではX線を使用するため、ごく微量ではあるものの、放射線による被ばくがあります。
その点、無痛MRI乳がん検診は定期的に受けても累積被ばくはゼロのままです。
がん発見の精度が高い
マンモグラフィをはじめとする従来の乳がん検査では、乳房の奥や脇の下など撮影が難しく、どうしても死角になる部分が存在しました。
MRI検査は検査できる範囲が広く、死角ができないため、どの部分も高精度で検査できます。
また、20~30代の若い方や高濃度乳房(デンスブレスト)の方は、乳腺組織の割合が多い傾向にあることから、マンモグラフィでは病変の発見が難しいとされています。
その点、MRI検査では乳腺組織の影響を受けにくく、若い方や日本人に多いとされる高濃度乳房(デンスブレスト)の方でも高精度で検査できるでしょう。
乳房の手術後でも検査できる
マンモグラフィでは、シリコンバッグやインプラントを入れる豊胸手術の経験がある方は、検査できない場合があります。
乳房を圧迫した際にシリコンバッグが破裂して炎症を起こしたり、位置が大きくずれたりする可能性があるためです。
乳腺超音波検査では乳房を圧迫しないものの、検査画像の精度が落ちたり、インプラントの裏側の病変を見逃したりする可能性があることから、受診できないケースもあります。
その点、無痛MRI乳がん検診では乳房を圧迫せず、乳房のすみずみまで確認できるため、乳房の手術後でも問題なく検査ができます。
ただし、インプラントの一部に金属を用いている場合は受診できないこともあるため、事前に受診予定の医療機関に確認しておきましょう。
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)の流れ
無痛MRI乳がん検診の基本的な流れは、次のとおりです。
- 問診表を記入する
- 放射線科(MRI検査室)へ移動する
- 検査着に着替える
- MRI検査を受ける
- お会計
受付から検査終了までは1時間程度で済む場合が多いため、短時間でがん検診を終えたい方にもおすすめです。
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)を受ける際の注意点
無痛MRI乳がん検診には多くのメリットがあるものの、検査を受ける際の注意点も存在します。
- 検診を受けられない場合がある
- MRI検査室へ持ち込めないものがある
- 生理前や授乳中の検査は控える
無痛MRI乳がん検診を安心して受けたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
検診を受けられない場合がある
無痛MRI乳がん検診では、強力な磁場を発するMRI装置を使用するため、次のような方は検査を受けられない場合があります。
- 妊娠中や授乳中である
- ペースメーカーや人工関節などの体内金属がある
- 大きな入れ墨やアートメイクをしている
- 閉所恐怖症である
当てはまる方は、事前に医療施設へ検査の可否を確認しておくようにしましょう。
MRI検査室へ持ち込めないものがある
下記のものは検査機器の故障や破損、検査時のやけどなどにつながる可能性があり、MRI検査室には持ち込めません。
- 金属類(携帯電話、時計、ピアス、ネックレスなど)
- 磁気カード(キャッシュカード、クレジットカードなど)
- 補聴器
- カイロ
- カラーコンタクトレンズ
また、マスカラやアイシャドウなどには磁気に反応する物質が含まれていることがあるため、検査の際にはメイクを落とすようにいわれる場合もあります。
生理前や授乳中の検査は控える
生理前や授乳中は乳腺が発達して乳房が張りやすいことで、検査の精度が落ちる場合があります。
高い精度で検査するためにも、生理前や授乳中は避けて受診しましょう。
無痛MRI乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)に関するよくある質問
ここでは、乳がん検診に関してよくある質問について回答します。
- 無痛MRI乳がん検診にはどのくらい時間がかかるのか
- 無痛MRI乳がん検診を受ける頻度はどのくらいか
それぞれの質問に対する回答について、詳しく解説します。
無痛MRI乳がん検診にはどのくらい時間がかかる?
検査時間自体は15分程度で終了し、受付から検査終了までの所要時間も1時間程度です。
事前の安静時間が必要だったり、検査前に造影剤を投与したりする必要もないため、忙しい方でも受けやすいでしょう。
無痛MRI乳がん検診を受ける頻度は?
2年に一度の定期的な検査が推奨されています(※10)。
ただし、親族に乳がんを発症した方がいる方は、乳がんの発生リスクが高いと考えられるため、1年に一度の受診は望ましいでしょう。
MRI検査では医療被ばくがなく、繰り返し受けても安心です。
まとめ
無痛MRI乳がん検診は、従来の乳がん検診で問題とされていた検査時の痛みや恥ずかしさを解消できる革新的な検査方法です。
マンモグラフィのように乳房を挟んで圧迫する必要はなく、検査着を着たまま撮影できるため、胸をだれかに見られる心配もありません。
受付から帰宅までは1時間程度で済むため、仕事や家庭のことで忙しくてなかなか受診できなかった方にも適しているでしょう。
上記のようなメリットがあるものの、MRI検査の特性上、体内金属があったり閉所恐怖症であったりする場合は、検査が難しいこともあります。
検査を受けるうえで不安な点や心配な点がある場合は、受診予定の医療機関に事前に確認しておきましょう。
<参考>
(※1)働き盛りの30代から急増|With Magazine|JA 愛知厚生連
(※2)日野市 乳がん検診
(※3)乳がんの統計|乳がんの基礎知識|東京医科大学病院
(※4)東京都福祉保険局 国が推奨する乳がん検診の開始年齢が何歳から?|東京都保健医療局
(※5)乳がん自費診療|久留米総合病院 健康管理センター |独立行政法人 地域医療機能推進機構
(※6)埼玉県 日高市 乳がん検診を受けましょう
(※7)平成28年度 職域におけるがん検診実施状況調査 結果報告
(※8)日本大学病院 健診センター ご利用料金一覧
(※9)費用|無痛 MRI 乳がん検診|地方独立行政法人 東京都立病院機構 東京都大久保病院
(※10)3)乳がん検診の受診間隔|2.科学的根拠に基づく乳がん検診|乳がん検診について|がん情報サービス