がんの早期発見に役立つ画期的な検査方法として、マイクロCTC検査が注目を集めています。
画期的といわれるのは、マイクロCTC検査が血液に含まれるがん細胞そのものをキャッチし、その数まで明示できるためです。
がん細胞が一定の大きさになると、一部が血液に漏れ出します。その性質を利用したマイクロCTC検査は、血液検査のみで全身のがんリスクがわかる点が特徴的です。
本記事では、マイクロCTC検査の具体的な検査方法を詳しく紹介します。
体内でがん細胞が生まれて増殖するプロセスと、早期発見のためのポイントもあわせて説明します。
がんの定期検査の必要性は感じていても、検査時間の確保が難しい方、あるいはがんの治療後で再発の予兆をいち早く知りたいと考えている方などには、ぜひ最後までお読みください。
がん細胞ができるプロセス
がん細胞は細胞の新陳代謝の過程で、稀に生じる遺伝子のコピーミスで発生します。
発生したがん細胞は悪性度は低いですが、増殖を重ねるうちに悪性度が高く転移しやすいがん細胞に変性します。
健康な方にも存在するがん細胞
健康な方の体内でも毎日数千個のがん細胞が生まれています。
がん細胞が生まれる理由は、古い細胞が新しい細胞に生まれ変わるときに10万回に1回ほどの確率で遺伝子のコピーミス(突然変異)が起こるからです。
遺伝子にコピーミスが生じる原因には、ピロリ菌、肝炎ウィルス、自然に存在する放射線、タバコによる発がん性物質などさまざまな原因が指摘されています。
人の体は約60兆の細胞でできており、そのうちの1%くらいが毎日生まれ変わっています。その際に遺伝子のコピーミスが起こると、たとえ10万回に1回の確率でも身体全体の細胞数からみると大きな数になります。
コピーミスにより生まれたがん細胞は、免疫細胞が見つけしだい異物として攻撃するため、通常は生き残れません。
しかし、免疫力が低下するなどですべてを退治しきれないと、生き残ったがん細胞が増殖をはじめます。
新生血管とは
がん細胞は正常な細胞より増殖力が盛んです。
がん細胞が増殖するためには、多くの酸素と栄養が必要です。そのため、がん細胞は周囲の血管に信号を送り新しい血管を延ばすように働きかけます。こうして新生血管が誕生します。
増殖中のがん細胞には、多数の新生血管がまとわりつくように血管から延びています。
新生血管はがん細胞に栄養を与えるのみでなく、がんが転移するときのがん細胞の通り道にもなります。
がん細胞の進展
がん細胞は、最初はすべてが良性で上皮性がん細胞と呼ばれます。
しかし増殖するにつれてその一部が、悪性の間葉系がん細胞に変性する場合があります。
上皮性がん細胞と上皮間葉転換(EMT)
最初にできる上皮性がん細胞は、1mmくらいの大きさになると新生血管を作り、血管とつながってさらに増殖を続けます。
がん細胞は5年から20年かけて30回の分裂を繰り返し、約1cmの大きさまで成長します。細胞数は約10億個まで増殖します。
がん細胞の増殖プロセスでもっとも問題なのは、増殖しているうちにがん細胞が上皮間葉転換(EMT)する場合があることです。
上皮間葉転換を起こすと、がん細胞は組織への侵襲性が高く、転移しやすく悪性度の高いがん細胞に変性します。
上皮とは、臓器、器官の表面を覆うシート状の細胞組織のことです。
胃や肝臓などの臓器の表面はもちろん、血管や尿管などパイプ状の器官の内側をおおう内皮も上皮組織の一種です。
間葉系がん細胞
上皮間葉転換によって悪性度が高くなったがん細胞は間葉系がん細胞と呼ばれます。
間葉系がん細胞はがん細胞同士の接着がゆるく、粘膜上皮から筋肉層に浸潤したり、他の臓器に転移したりする高い運動性能をもつ特徴があります。
浸潤(しんじゅん)とは、がん細胞が上皮組織からその内側の筋肉層にしみ込むように広がっていくことです。
離れた臓器への転移は、間葉系がん細胞の一部が新生血管を通って血管に入り、血液やリンパ液によって運ばれることで生じます。
マイクロCTC検査とは
マイクロCTC検査とは、血液中に悪性度の高い間葉系がん細胞が存在しないか調べる検査です。
CTCは、Circulating Tumor Ceiis(血中循環がん細胞)の略で、血液中に遊離した上皮がん細胞と間葉系がん細胞の両方を指します。
CTC検査は日本の厚生労働省にあたる米国FDAが承認している先端検査のひとつで、
欧米では29,000もの関連論文が発表されています。
マイクロCTC検査は欧米で主流となっているCTC検査の精度をさらに進化させ、悪性度の高い、浸潤、転移の能力をもつ間葉系のがん細胞のみを検出します。
間葉系がん細胞のみを捉えるメリット
マイクロCTC検査で上皮系がん細胞を検出せず、間葉系がん細胞のみを検出することには大きなメリットがあります。
上皮性がん細胞は、血液中に遊離しても他の臓器に付着する前に免疫機能によって死滅すると考えられています。転移のリスクが非常に低いのです。
それに対して血液中に間葉系がん細胞が見つかった場合は、体のどこかに悪性度の高いがん細胞がある可能性が高いことを意味します。できるだけ早くその場所をつきとめて取り除くことが必要です。
リスクの低い上皮性がん細胞とリスクの高い間葉系がん細胞の両方を検出するCTC検査では、がん細胞が検出されたとしてもリスクの度合いを測れません。
その意味で間葉系がん細胞のみを検出するマイクロCTC検査には大きなメリットがあります。
1回5分の採血で全身のがんリスクが検査できる
マイクロCTC検査は血液を採取して検査します。検査は1回5分ほどで終了し、あとは結果を待つのみです。
血糖値を測る血液検査のように、採血前に食事を控える必要はありません。
CT、MRI、胃カメラなどの検査は、がんの場所を特定するのに非常に有効です。しかし、無症状の方が健康診断の一環で受ける検査には次のようなデメリットがあります。
- 1~2種類の検査では、全身のリスクを検査できない
- 全身のリスクを検査しようとすると検査の種類が多くなり、それぞれの検査に時間がかかり手間と費用が積み重なる
マイクロCTC検査は、1回の採血で血液がん以外の全身のがんリスクの検査が可能です。
再発の予兆も早期発見
マイクロCTC検査は、がんの再発の予兆も早期に発見できます。
検査で血液中に間葉系がん細胞が検出されたときは、元の場所か他の場所でがん細胞が再び増殖しつつある可能性が高いと言えます。
がんの手術や抗がん剤治療が終了したあと5年間は、半年ごとに再発のチェックが必要とされています。
従来はPET検査やCT検査でチェックしていましたが、これらの検査には放射線による医療被ばくのデメリットがあります。
採血するのみのマイクロCTC検査ならば医療被ばくのリスクなく再発の早期発見が可能です。
特異度94.45%の高精度
マイクロCTC検査は特異度94.45%の高精度で、間葉系がん細胞を検出します。
特異度とは、検査で陰性の方を正しく検出する能力のことです。
特異度94.45%の場合、陰性と判定された被検者10,000人の内で9,445人は、偽陰性ではなく間違いなく陰性といえます。
遺伝子検査、腫瘍マーカー、尿検査など従来の早期スクリーニング検査は、がん患者に現れることが多い間接的な傾向値からリスクを判定する検査です。
それに対してマイクロCTC検査は血液中の悪性度の高いがん細胞そのものを捕捉して、その個数まで明示します。
マイクロCTC検査は、陰性すなわちがん細胞検出せずと判定されたときの安心度が非常に高いのです。
マイクロCTC検査で検出された場合
マイクロCTC検査で間葉系がん細胞が検出されたときは体内のどこかにがんがある可能性が非常に高いので、その場所を特定するための診断や治療が必要になります。
がんの可能性が高い
マイクロCTC検査で間葉系がん細胞が検出された場合は、湿潤、転移をおこしかけているか、既におこしている悪性のがん細胞が体のどこかにある可能性が高いことを意味します。
CTCが検出された場合、悪性度の高いがんに罹患している可能性が高く、画像診断や検診をおすすめします。
画像診断や検診の方法には、CT、MRI、PET、胃カメラ、大腸カメラなどがあります。
検診でがんが見つからなかったときは、がん細胞がまだ画像診断が可能な大きさに成長していない可能性があります。
その場合は健康状態を注視する、定期検診や人間ドックを毎年受けるなど、監視を怠らないことが大切です。
がんの再発に備えるためのマイクロCTC検査も同じで、間葉系がん細胞が検出されたときは、CTやMRTなどによる場所の特定と治療が急がれます。
がんが発見可能な大きさになっていなかった場合は、下記のような代替治療で再発リスクを低減する対処法もあります。
- 高濃度ビタミンC点滴
- 免疫療法
- 温熱療法
- ヨウ素治療
- 食事療法、禁酒、禁煙など生活習慣の改善
画像診断が可能なサイズは約1cm
がんの大きさが1cmほどになると、CTやMRIなどの画像診断で発見が可能です。
1cm程度ならば、ステージ0からステージ1までの可能性が比較的高いと言えます。
がん細胞は分裂を繰り返し増え、1cmを超えるころから急速に大きくなることが多いです。半年から1年でステージ2や3にまで進行するがんもあります。
がんの悪性度は大きさのみでは判断できませんが、早期発見または、小さいうちに発見する方が治療の選択肢が拡がります。
しかし毎年がん検査するとしても、複数の検査方法で全身をチェックするのは時間的にも精神的にも大きな負担です。
かといって大腸カメラやCTなど1つや2つの検査では、他の部位のがん細胞を見逃すリスクがあります。
そのような負担やリスクを軽減してくれる検査方法がマイクロCTC検査です。
マイクロCTC検査の注意点
マイクロCTC検査を受ける際は下記の免責事項に注意しましょう。
悪性度の低い上皮性のがん細胞は捕捉しない
マイクロCTC検査は悪性度の高い間葉系がん細胞のみを検出する検査で、悪性度の低い上皮性がん細胞は検出しません。
がんの診断ではない
がんに罹患しているかどうかの診断は医師のみがおこなえる専権事項です。
したがって、マイクロCTC検査はがんを診断する検査ではなく、検査によって得られた情報は医師の診断に代わるものではありません。
医療機関の受診が重要
マイクロCTC検査で、CTC(血中循環がん細胞)が検出された場合、がんに罹患していることを確定するものではありません。
また、検出されなくてもがんに罹患していないことを証明するものではありません。
検査結果の解釈や今後必要な対応については、医師へ相談してください。
マイクロCTC検査に関するよくある質問
マイクロCTC検査に関してよくある3つの質問に回答します。
マイクロCTC検査にかかる費用は?
1回のマイクロCTC検査1回の価格は180,000円(税込198,000円)です。
検査(採血)時に、初診料3,300円(税込)が別途かかります。
マイクロCTC検査の流れは?
マイクロCTC検査は全国の提携医療機関で受けられます。提携医療機関に申し込みをして予約してください。
検査当日は予約した医療機関で採血するのみです。採血前に食事を控える必要はありません。
採血された血液は血液検体専用の送付ボックスで検査センターに送付されます。
検査センターでは専門の検査技師が1検体ずつ分析をおこない、約1週間で検査結果が出ます。
検査結果は、採血をした提携医療機関で確認してください。
マイクロCTC検査をおすすめする方は?
マイクロCTC検査は次のような方におすすめします。
- 仕事や子育てで忙しく、定期的ながん検診のためにあまり多くの時間を取れない方
- 複数の検査方法によらずに、1回の検査で全身のがんリスクを知りたい方
- 放射線を利用するがん検査の被爆リスクを避けたい方
- がんの治療後で、再発の予兆の有無をできるだけ早く知りたい方
まとめ
マイクロCTC検査は、血液検査のみで全身のがんリスクがわかる画期的なスクリーニング検査です。
血液中に漏れ出したがん細胞のうち悪性度の高い間葉系がん細胞のみを検出し、その数まで明示するため偽陰性の確率が非常に低い信頼度の高い検査です。
CTやMRIなどの画像診断では1cm未満のがん細胞のかたまりを発見できませんが、マイクロCTC検査はそれ以前に血液中に漏れ出している悪性度の高いがん細胞の確認が可能です。
定期的にがん検査を受けたいがさまざまな検査を受ける時間が取れない方や、がんの治療後で再発の予兆があればできるだけ早く知りたい方にもマイクロCTC検査をおすすめします。