「がんが再発したらどうしよう」「抗がん剤治療の効果がわからない」という声が多く見受けられます。
がんを調べる検査にはいくつかの種類がありますが、身体に負担がかかる検査が多く、また、がんが疑われる部位のみを調べる検査では、転移の早期発見は難しいでしょう。
全身のがんや、がんの再発・転移を早期に見つけられる、身体的負担が少ない検査方法の一つがPET検査です。
本記事では、
- PET検査の概要
- PET検査で発見しやすいがん・発見しにくいがん
- PET検査のメリット・デメリット
- PET検査の費用負担・流れ
- PET検査に関するよくある3つの質問
について詳しく解説します。がんの再発・転移が心配な方や、一度の検査で全身のがんを調べたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
PET検査の概要
PET検査は、全身のがん細胞の活性度を撮影する画像検査です。
がん細胞の習性に着目し、病巣の広がり・転移を早期に見つけることが可能です。さらに、従来のがん検査で発見可能なサイズより小さいがんを見つけられます。
がんの再発・転移の早期発見や、がん治療中の経過観察や治療の効果判定にもPET検査が役立ちます。
また、身体的な負担が少ない検査である点も、PET検査の特徴の一つといえるでしょう。
ここからは、PET検査の概要をお伝えします。
がんの再発防止・転移の早期発見につながる
PET検査は、がんの再発防止・転移の早期発見に有効な検査です。
がん細胞は、ブドウ糖をエネルギー源として増殖するため、ブドウ糖に多く集まる性質を持っています。
増殖が盛んながん細胞は、正常な細胞に比べて約3~8倍のブドウ糖が必要であるといわれています。※1
その性質に着目し、ブドウ糖代謝が高まっている再発がんや、がん病巣の広がりを調べる検査がPET検査です。
検査方法は、FDG(18F-FDG:フルオロデオキシグルコース)といわれるブドウ糖に似た放射性物質を注射し、体内に行き渡らせてからPETカメラで撮影します。
がん細胞には、FDGが正常な細胞より多く集まるため、FDGの全身分布を画像化すれば、がん細胞の活動状況がわかります。
一度の検査で全身のがんの有無を調べられる
PET検査では、一度の撮影で全身のがんを調べることが可能です。
がん細胞は、血管やリンパの流れに乗り、ほかの臓器や器官に転移します。発生した場所から遠隔な位置に転移する可能性も少なくありません。
一般的に、CT検査やエコー検査の場合、がんが疑われる部位のみを撮影するため、遠隔転移の確認は困難です。
PET検査であれば、全身のブドウ糖代謝の機能を隅々まで撮影し、細胞の異常を確認するため、予想外の位置にがんが転移している場合も、早期に発見できます。
従来のがん検診では、がん細胞が1cm以上に成長するまで発見されませんが、PET検査の場合、1cm未満のがん細胞を見つけることが可能です。
また、一度に全身の検査ができるため、何度も検査を受ける必要はありません。
抗がん剤の治療効果を判定できる
PET検査では、抗がん剤治療の効果の判定にも役立ちます。
抗がん剤治療は、がん細胞のDNAや細胞分裂に必要な酵素などを標的にし、がん細胞の増殖を防ぐ化学療法です。
抗がん剤にはさまざまな種類があり、がん細胞の型や進行度、これまで受けた過去の治療などにあわせて選びます。
必要に応じて、複数の薬を併用したり、薬を変更したりする必要があるため、抗がん剤の選択はとても重要です。
抗がん剤の治療中・治療後にPET検査をおこなえば、検査薬(FDG)に集まるがん細胞の有無が確認できるため、全身の病巣の広がりと治療の効果を確認できます。
身体的負担が少ない
PET検査は、検査薬を注射するのみで、身体的な負担が少ない検査といえます。
検査薬に用いるFDGは、本来、体にある成分のブドウ糖に非常に近い物質であるため、健康被害を与えることはありません。
FDGは、微量の放射線を含んでいますが、尿に混じり体外に排出されるため過度に心配する必要はないでしょう。
検査自体は、PET検査の装置の上に横になっている間に終了します。痛みや不快感もなく、リラックスして受けられる検査です。
PET検査で発見しやすいがん・発見しにくいがん
PET検査は、全身のがんの再発・転移を調べられる検査ですが、必ずしもすべての部位のがんを見つけられるわけではありません。
ここで、PET検査の特性上、発見しやすいがん・発見しにくいがんをお伝えします。
PET検査で発見しやすいがん
PET検査は、一度に全身のがん病巣の広がりを確認できます。とくに、下記のがんの再発・転移を調べるのに有効です。
- 大腸がん
- 乳がん
- 肺がん
- 子宮体がん
- 卵巣がん
- 咽頭がん
- 喉頭がん
- 甲状腺がん
- 食道がん
- すい臓がん
- 転移性肝がん
また、脳腫瘍、悪性黒色腫、悪性リンパ腫の発見にも役立ちます。
しかし、ブドウ糖の代謝が低い、ごく初期のがんの原発巣(がんのはじまり)や、悪性度の低いがんの発見には向いていません。
PET検査で発見しにくいがん
PET検査では、がん細胞がブドウ糖に集まる性質を利用した検査であるため、正常な細胞でもブドウ糖が集まりやすい下記のがんは、発見が難しいといわれています。
- 脳がん(脳腫瘍)
- 肝臓がん
- 腎臓がん
- 膀胱がん
- 白血病
また、ブドウ糖をそれほど必要としない、胃や腸などの消化管粘膜に発生する初期がんは見つけられません。
そのほか、検査薬(FDG)は尿として排出されるため、集積する泌尿器系のがんの発見も不得意です。
PET検査のメリット・デメリット
ここで、PET検査のメリット・デメリットを紹介します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
がんの発見 | がんの再発・転移の判定が可能一度に全身がんを診断できるがんの良性・悪性の診断に有効CT検査やMRI検査で発見しにくいがんを発見できる | がんの原発巣の発見は不可一部のがんは、発見できない |
身体的負担 | 痛み・違和感がない検査薬の副作用がない | 被ばくのリスクがある |
その他 | 抗がん剤治療の効果がわかる | 血糖値が高い場合、精度が低下 |
PET検査の大きなメリットは、やはり一度の検査で全身のがんを調べられる点です。
CT検査やMRI検査はがんの形を撮影するため、がんの位置により画像に写らない場合があります。
PET検査は、がん細胞の活性度を画像化するため、CT検査やMRI検査では発見できなかったがんを見つけることが可能です。
PET検査のデメリットは、放射線を含む検査薬を投与する必要があり、微量の医療被ばくが発生します。
しかし、検査薬は尿として排出されるため、過度な心配はいらないでしょう。
PET検査の費用負担・流れ
ここで、PET検査の費用と流れを紹介します。
費用の目安や保険適用の可否、検査の流れについて知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
PET検査の費用
PET検査の費用は、10万円前後です。※2
がんと診断された方はもちろん、がん治療の一環として検査を受ける方や、抗がん剤の効果を判定するために受診する方は、保険適用が認められます。
保険適用が認められる具体的なケースは、下記のとおりです。
- 抗がん剤の治療効果判定
- 過去にがんを患い、再発が疑われる場合
- がんの病期(ステージ)の診断
- がんの切除範囲を確定させる
また、脳疾患・心疾患がある、もしくは疑われる際や、医師が必要と判断した場合は、保険適用で検査が受けられます。
一方、症状がない、健康な方が受ける任意型検査(健康診断のオプションや人間ドック)の場合、全額自己負担になります。
検査費用は、医療機関により異なるため事前に確認しましょう。
PET検査の検査手順
PET検査の検査手順は、下記のとおりです。
- 絶食する
- 検査薬を注射する
- 安静にして待機する
- 全身撮影する
ここからは、それぞれの手順を詳しくお伝えします。
1:絶食する
PET検査前は、絶食する必要があります。
検査薬(FDG)を体内に取り込みやすい状態をつくるため、検査前5~6時間程度は食事を控えましょう。
検査当日は、水やお茶のみ摂取可能です。糖分を含むジュースやスポーツ飲料や、牛乳、アルコール類は飲めません。
また、サプリメントや栄養ドリンク、風邪薬などの摂取もお控えください。
そのほか、検査精度に影響するため、糖尿病の内服薬やインスリン投与は制限されます。
2:検査薬を注射する
静脈から検査薬(FDG)を注入します。所要時間は、5~10分程度です。
注射針を刺す際に、チクっとした軽い痛みはありますが、検査薬の注入時は痛み・違和感はありません。
3:安静にして待機する
全身に検査薬が行き渡るまで、ベッドやソファで安静にして待機します。
待機中、スマートフォンやタブレット、読書、ゲームなどをすると、脳が活性化し検査薬が集積するため、使用は控えましょう。
検査開始までに、水(ペットボトル500ml)をなるべく多く飲む必要があります。血液中に残った検査薬を排出し、診断しやすくするために水分補給は重要です。
4:全身撮影する
検査薬を注入して1~2時間後、検査台の上であおむけになり、20~30分程度かけて全身の断面画像を撮影します。
PETカメラ装置は、検査台ごと動き、ドーナツ状のカメラの中を通過します。そのため、自身で体を動かす必要はありません。
検査時の痛みは一切なく、静かに寝ている間に終了します。
撮影したPET画像は、専門技師が画像のブレの有無を確認し、疑わしい部位があった場合は、30~2時間後に2回目の撮影をおこないます。
一般的に、2回目の撮影は必要に応じた場合のみおこないますが、はじめから2回撮影するスケジュールを組んでいる医療機関もありますので、事前に確認しましょう。
PET検査に関するよくある3つの質問
最後に、PET検査に関するよくある3つの質問を紹介します。
- PET検査とPET-CT検査は何が異なるのですか?
- PET検査を受ける際に注意する点はありますか?
- PET検査には副作用がありますか?
PET検査の正しい知識を深めてから、検査に挑みましょう。
PET検査とPET-CT検査は何が異なるのですか?
PET-CT検査は、PETとCTの画像を同時に撮影する検査方法です。
がん細胞の活性度を映し出すPET画像と、がん細胞の形態を精細に撮影するCT画像の利点を合わせることで、より精度の高い検査画像の取得が可能です。
PET検査は、がん細胞の特性に注目した検査であり、全身の活性化したがんの撮影は可能ですが、画像が鮮明でないことから、がんの正確な位置・大きさ・形は把握できません。
診断の精度を向上させるためには、PETとCTの組み合わせたPET-CT検査が大変有効です。
また、PET-CT検査は検査時間の短縮につながる利点もあります。
従来は、別々に撮影したPET画像とCT画像を重ねあわせて診断する必要がありましたが、PET-CT検査は2つの検査を同時におこなうことが可能です。
PET検査を受ける際に注意する点はありますか?
PET検査を受ける際は、次のことに注意する必要があります。
- 前日は、運動や肉体労働、スポーツ、カラオケなどを控える
- 当日は、水・お茶以外のものを摂らない
- サプリメントや栄養ドリンクの摂取は前日から控える
- 検査前の5~6時間は絶食する
- 糖尿病薬の服用やインスリン投与を制限する
- 検査時は金属の装着ができない
また、胃部X線検査を受けた後は、胃や消化管にバリウムが残っている可能性があり、診断の妨げになるためPET検査は受診できません。
そのほか、検査後においては、放射線を含む検査薬が体内に少量残っているため、検査終了後24時間は、妊婦や乳幼児との接触をさけた方がよいでしょう。
被ばくのリスクがあるため、妊娠中または妊娠の可能性がある方や授乳中の方は、PET検査を受けられません。
PET検査には副作用がありますか?
PET検査には、副作用はありません。身体的な負担が少ない検査といえます。
通常、人体に影響を及ぼす放射線量は、100mSv以上と報告されていますが、PET検査で使用する薬剤の放射線量は、3.5mSvです。※3
また、薬剤の放射線は時間とともに弱くなり、尿で体外へと排出されるため過度な心配は無用です。
まとめ
本記事では、PET検査の概要・特徴について解説しました。
PET検査は、従来の検査に比べて、早期がんや、がんの再発・転移をいち早く発見できる、優れた検査方法です。
検査の痛みや違和感、副作用がないことから、安心して受けられる検査といえます。
がんは、健康診断で見つけることはできません。また、がん検診で調べられる範囲には限界があります。
初期のがんは自覚症状がないため、健康に過ごしていても体内にがんが潜んでいる可能性は否定できません。
また、一部のがんには、遺伝子要因が認められています。がんになりやすい遺伝子を持っている方は、がんの発症・再発リスクが高いといえるでしょう。
近年では、日本人のがん死亡率が増加しており、がんによる死亡を防ぐためにはがんの早期治療が必要不可欠です。※4
定期的ながん検診とPET検査・PET-CT検査を併用し、がんの早期発見・再発防止につなげましょう。
※本記事の情報は2023年10月時点のものです。
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〈参考サイト〉
※1:PET検査ネット「PET検査とは?(がん検査と基礎知識)」
※2:PET検査ネット「PET検査費用について(がん検査と基礎知識)」
※3:国立がん研究センター「PET検査とは」
※4:がん情報サービス「がん統計」